1日の歩数と、病気の予防(筋力低下、うつ病)について
この冬一番の寒さと、コロナウイルスの流行で、室内にいる時間が増えていませんか?
国内では2020年の初めに流行してから、今年で2回目の冬を迎えました。
お客様とのカウンセリング時に、話をよく伺うと、自宅の滞在時間が増えたことで、運動不足になっている方が多いようです。「徒歩で買い物に出かけている」とはいっても、流行前と比べて、同じくらいの量を歩いているかを振り返ってみましょう。
自宅にいる時間が増えることで、1日の運動量以上に食事量が増えたり、質の良い睡眠を得にくくなったりすることがあります。運動不足になって困ることは、フレイル(筋力低下)による心身の衰えと、血流低下などによる自律神経の不調(うつ病等)になることです。
運動で手軽に始めることができる方法は、何といっても、「ウオーキング」です。特別な道具が不要で、お金もかからず、いつからでも始めることの出来るメリットがあります。また、歩くことは良いことだと世間で広く認知されています。
一方デメリットは、天気や気温に影響されること、ウオーキングで得られる効果をすぐに体感しにくいこと、黙々と歩くことに楽しみを見出しにくいことでしょう。ウオーキングを習慣化するには、決めた時間、又は決めたタイミングが来たら、多少面倒だなと思ったとしても、迷わずさっと外に出ることでしょう。
厚生労働省では、「健康日本21」の方針として、「1日1万歩」歩くことを理想にしています。
当面10年間の目標として、実際の1日あたりの平均歩数よりも1000歩増の男性9200歩、女性8300歩(高齢者 男性6700歩、女性5900歩)歩くことを目標にしています(平成9年度国民栄養調査を基準)。この目標には、日常生活で歩く歩数も含まれています(買い物、通勤での移動、階段を上ることなど)。
※ 1000歩は、約10分で得られる歩数であり、距離600-700mに相当すると計算しています。
※ 世界保健機関(WHO)では、65歳以上を高齢者と定義しています。
「1日1万歩」は、アメリカのスタンフォード大学で出された文献が根拠になっています。週当たり2000kcal(1日平均で300kcal)のエネルギー消費に相応する身体活動が推奨されています。アメリカのスポーツ医学会協会が提示する式をもとに計算すると、1日300kcalをエネルギー消費量するには、1日1万歩の歩数で相応するそうです。
在宅で仕事をしている方、自宅での滞在時間が増えている方には、1時間に1回はトイレに行く、買い物には遠回りをして歩く、身の回りを掃除することなどこまめに動くことがお勧めです。また、天気の悪い日や足腰に痛みが強くて歩けない時には、ラジオ体操(椅子に腰をかけてする方法もあり)や、動画を見てエクササイズすることを、を取り入れてみましょう。
また、健康維持目的の場合の、運動強度の目安があります。おしゃべりしながら運動でき、汗ばむ程度が良いです(「にこにこペース」と呼ばれています)。このペースで有酸素運動をすると、一定時間継続でき、脂肪燃焼に役立ちます。持病のある場合は、楽にできるペースから徐々に強度を増やしていくと良いでしょう。
歩くことと病気の予防について。群馬県中之条町の65歳以上の住人5000人を対象に日常の身体活動と病気予防の関係について調査しています(2000年より継続的に実施)。1日あたり2000歩(早歩きの時間 0分)でねたきり予防、4000歩(早歩きの時間 5分)でうつ病予防、5000歩(早歩きの時間 7.5分)で要支援、要介護、認知症、心疾患、脳卒中を予防できるという結果が出ています。
このことから、1日1万歩を歩くことを急に始めるよりも、少ない歩数だとしても、とにかく毎日継続することの方が、長い目で見て体力の向上と病気の予防に役立つと言えます。
けやき堂薬局では、漢方薬の選薬時と服用後のフォローの際、食事・運動のアドバイスやチェックも同時に行っています。選薬した漢方薬の効果を引き出すためと、症状回復後では良好な状態を長続きできるようにするためです。
一言で食事や運動といっても、一人ひとりの体質や生活習慣、生活背景は異なりますので、必要なことに的を絞って伝えています。
参考
厚生労働省ホームページ 健康日本21(身体活動・運動)
Newton 2021.7 健康の最新科学
健康長寿ネット 運動強度とは