睡眠の質を上げるためにお勧めの漢方・生活習慣
肉体疲労や精神疲労をとるのに、充分な睡眠が大切なことをご存知の方は多いと思います。
健康に関する書籍だけでなくビジネス書にもたくさん取り上げられていますね。書籍では「スタンフォード式最高の睡眠 西野精治(著)」、「睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウオーカー(著)」などあります。良い眠りは心と体の健康を維持したり、日中の生活の質を向上させたりすることに必要なものです。
睡眠をとることで、体の疲れをとること以外に、脳では起きている間に入ってきた情報を整理して取捨選択したり、記憶を定着させたりします。睡眠が充分にとれていなければ、記憶力や集中力が低下して実力を発揮できなかったり、マイナス思考になったりします。反対に、質の良い睡眠がとれていると、日中の家事や仕事、学習がはかどります。
睡眠剤を飲むと、翌日に眠気を持ち越すことがあります。最初のうちは睡眠をとれているように感じていても、長期で継続して飲んでいくうちに疲労感が抜けなくなることもあるようです。新薬を否定はしませんが、眠れるように環境整備や生活習慣の見直しがまず必要だと私は考えています。
漢方を服用した場合は、成分が体に残ることがありません。症状が軽く、気が高ぶる場合は、寝る前に紫華栄・ササイサンを各1包飲むと、翌朝の目覚めが良くなります。体力が低下している時の不眠に酸棗仁湯(さんそうにんとう)、とり越し苦労のある不眠には温胆湯(うんたんとう)、更年期のホルモンバランスの低下に加味逍遙散(かみしょうようさん)や芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)などを使い分けます。寝ても寝た気がせず、慢性的に疲労が続いている場合は、ワタナベオイスターDHMBA(ディーバ 特許取得・機能性表示食品)を用いるとよい結果が出ることもあります。
ご高齢場合、年齢を重ねるうちに、睡眠に導くホルモン(メラトニン)の分泌量が減るので、中途覚醒が起こりやすくなります。その上、子育てや仕事から引退して運動量が減ると思うように眠れないことがあるかもしれません。多少、寝足りないように感じていても、昼間に家事や用事を支障なく出来ている、または昼寝やうたた寝(目安として20分程度)をして、頭がすっきりする程度であれば、問題ありません。
その一方で、子供や若い世代の夜型化による、不眠が増えているそうです(NHKきょうの健康2021年3月号)。寝る直前まで、スマートフォンやパソコンを熱中して見ていることが夜型になる一因だそうです。
きょうの健康で「子どもの睡眠障害」の記事を担当した井上雄一医師(東京医科大学教授)によると、若い世代の不眠を解消する方法として、以下の3つが挙げられています。
(1)午前中の光をたっぷりと浴びること、(2)昼間は体を動かすこと、(3)夜は明るい光を避けることです。
(1)-(3)を取り組むことで体内時計が整うと書かれています。スマートフォンなどの液晶画面から出る光に含まれる「ブルーライト」は、睡眠に導くホルモン「メラトニン」の分泌をかなり抑え込んでしまうそうです。子供の場合は、大人よりも瞳孔が大きく、光をより多く目の中に取り込んでしまうため、その影響は大人の2倍ほどあるといわれています(Higuthi S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014)。上に挙げた(1)-(3)を4週間続けることで体が慣れてくる、と書かれていました。
これまで当薬局でカウンセリングさせていただいてきた経験でも、不眠や疲れが抜けない方に対してスマートフォンなど明るい画面を睡眠直前まで見ていた場合に、入浴後は見ないように変えてもらったことで、大人の半数以上の方の睡眠の質が良くなっています。
最初のうちは習慣を変えるのに、精神的にきついかもしれませんが、お困りの場合や今より良くしたいのであれば、取り組むだけの価値はあるのでぜひ参考にしてください。
(NHKきょうの健康2021年3月号では“就寝時刻の2時間前から液晶画面を見ないようにしよう”と書かれています。念のためお伝えしておきます。)