風邪の予防と、ひき始めの対応について(自然薬・漢方薬)
風邪などの感染症について、体の外からやってくる病気や不調の原因のことを「外邪(がいじゃ)」といいます。外邪は、異物(微生物など)、気温や湿度の変化(寒さ、暑さ、空気の乾燥、湿気 等)を言います。
当然のことながら、本来は体の免疫力・防御力が備わっていれば、風邪をひかないのですが、備えがなければ風邪をひいてしまいます。すぐ近くにウイルスや細菌があり、それらが身体に取り込まれると感染してしまうことがあります。風邪などの感染症を発症するか無症状なままでいれるのかは、個人の体の事情によります。
元気な時は、皮膚の表面近くで、バリアの役目をするスリットのような「腠理(そうり)」が体の外への汗の通り道として開けたり閉じたりしています。普段は、体に備わっている防御役の「衛気(えき)」の働きで汗をかいて熱を逃し、外邪の侵入を防いでいます。そして外邪が体に侵入しようとすると、衛気が体表面に集まって外邪を体外へ追い出します。そうすることで病気にならずにすみます。しかし、排除できなければ、病気になってしまいます。
体表で衛気と、外邪が闘う時に、悪寒(寒気)が現れます。衛気と外邪が闘う時に、衛気が次々と表層に集まってくると発熱します。
その一方で、外邪を外へ追い出せないでいると、外邪の侵入場所である頭部、背部、関節に腫れや充満感などをつくります。
仙頭クリニック院長 仙頭正四郎 医師は、著書「漢方で免疫力をつける」で、感染症に罹患する順序や、その予防法について紹介しています。
免疫力を育てる作戦として
● 早寝で夜間に十分な睡眠時間をとること
● 少しでも具合悪く感じたら、何を差しおいてでもたくさん寝る
● 自分が動いて汗をかく
● 大声で笑う
● 冷やさない(薄着と冷飲食を避ける)
● 空腹に合わせた食事
● 陰気は捨て、ウキウキ・ワクワク陽気に過ごす
● 「明るく、軽く、楽しく、歩く(動く)」という生活をする
ことなど合わせて12項目を提唱しています。
外邪を追い出す(発散する)食べ物は、辛味のあるものや酸味の芳香性のあるものです。ネギ、生姜、コショウ、ワサビ、唐辛子、シナモンなどの薬味や、みかん等です。食べると体を暖かくしたり、じわっと汗をかいたりすることで発散を助けます。生姜湯や葛湯が風邪の時に好まれるのは、このような発散する作用を生かしています。
風邪のひき始めにおすすめは、自然薬「風治散(ふうじさん 第2類医薬品)」と同じく自然薬の「紫華栄(しかろん 第3類医薬品)」です。寒気が出たときにすぐに(30分以内に)飲みます。お湯に溶いてから温かいうちに飲むと、体を温める作用が増すので、体表面部の外邪や異物を体の外に発散する作用が増します。
一方で発熱時には漢方薬「柴葛解肌湯(さいかつげきとう 第2類医薬品)」を飲みます。私がお客様にお出しした経験では、発熱してからの早い段階でこのお薬を飲んでいるほうがよく効いています。柴葛解肌湯は、発熱とは別に風邪のひき始めからこじれた風邪(風邪の後期)にかけて飲むことも可能です。
ここではお勧めのお薬の一部を紹介していますが、実際は風邪の症状や段階に応じて使い分けをします。
風邪かなと気が付いた段階ですぐに適した漢方を飲むことで、早期回復へと向かいます。進行が早いため、症状が現れた際すぐに取り出して飲めるよう、初期に飲む漢方薬を最低でも3日分ご家庭に常備しておくことをお勧めします。(岡北)
参考書籍
漢方で免疫力をつける 仙頭正四郎(著)
薬膳・漢方 喩静/植木もも子(監修)
問診のすすめ 金子朝彦/邱紅梅(著)