見える痰と、見えない痰
空気が乾いて、咳や痰の出やすい季節です。痰には、見える痰と、見えない痰があることをご存知ですか?一般的に知られているのは、気道の粘膜からつくられる気道分泌物(粘液)です。
これに対して見えない痰とは、(漢方医学で)身体の中に留まる病因物質のことを言います。体の中からこれだけを取り出すことはできませんが、見える痰と似ていて、ネバネバ、さらさらしたものとされています。漢方医学ではこの見えない痰で病気や不調を起こすと考えています(湿痰)。
目に見えるものではないのに、どうして体内に湿痰があるか判別できるのかというと、鏡で舌を見た時、舌に厚みがあり、ぽってりと大きく見えることで判ります。余分な水を体に蓄えているので、舌にむくみができています。
さらに舌の表面には、白色の苔が分厚くついています。体の中の余分な水は「湿(しつ)」となり、「湿」が固まって動きが悪くなったものが「痰」です。湿と痰をまとめて湿痰と言います。湿痰は肺や気管支だけでなく体の中のどこにでもできます。存在する場所により、「気(元気の気)」や「血(けつ)」の流れを邪魔します。症状は、体の重だるさ、めまい、むくみ、頭痛、胃の不快感、などが現れます。眠くなることもあります。
特に雨の日や湿度の高い日に症状が強く現れやすいです。湿痰はなかなかの厄介者で、体の中から排除するにとても時間がかかります。お客様のカウンセリングで舌をチェックすると湿痰のあるお客様は多いです
痰はここで取り上げた湿痰以外に、「寒痰」「熱痰」「燥痰」などあります。
湿痰の産生を防ぐための養生(食事と生活によるセルフケア)は一年を通して水分を過剰に摂らないようにすることです。また、体の中を水が巡った後、体外へスムーズに水や代謝産物が排泄されるように、内臓を冷やさないようにすること、血流を良くすることが大切です。冷飲食を控えて、水分は口が乾いてきたら少量ずつ飲みます。体を温かくして過ごすことがお勧めです。
現代は、冷蔵庫などの家電や自動車が普及していることもあり、体の中で水の巡りと血液の流れが悪くなりやすい環境になっています。血流を良くするには、ストレスを溜めないようにすることも大切です。一度出来てしまった湿痰はなかなか排除できず、それがなくなるのに時間がかかります。ウオーキングやラジオ体操、ストレッチ運動などを毎日少しずつ、継続していくことが大事です。
(参考書籍:読体術 体質判別・養生編 仙頭正四郎(著)、漢方処方の構成と適用 森 雄材(著))