どちらも正しいでしょうか?
漢方薬について、「効果が穏やかなので、年単位で飲まないと効果が出てこないのですよね?」という質問を受けることがあります。
その一方で、「薬は、すべて毒だから、漢方薬も同様で、長く続けてのんで大丈夫なものなのか?」、という疑問を持つ方もいらっしゃいます。
どちらも正しいでしょうか?
急性病や、慢性病、体質改善についての具体的な服用の期間の目安については、
前ページの、「漢方薬の効果」も併せてご覧ください。
薬(漢方薬)は、長くのんで、本当に大丈夫か?
2000年以上前に中国医学について記された古典であり、いまなお漢方の専門家たちの間で活用されている教科書に、「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」があります。その書籍の中では、生薬には上品(じょうほん、上薬)、中品(ちゅうほん、中薬)、下品(げほん、下薬)があり、3種類に分類できるとしています。生薬の365種類を分類しています。これは、上薬がいい薬、下薬が、悪い薬という意味ではなく、必要に応じて使い分けよ、という意味で分けられています。
上、中、下の順に効き目は鋭くなります。おおむね上品は、古来から不老長生薬(健康でいるために、長く続けて服用できる。短期間で効果は出ず、長期間服用して効果が少しずつ表れる。効果がわかるために年単位かかることも。)、中品は、保健薬(体に合えば副作用が出にくい)、下品は、治療薬(急性病や症状の改善のために使うもの、使用は必要最低限にする)と考えると、わかりやすくなります。
たとえば、風邪を引いて高熱が出たなどの急性病のとき、上薬を使っても良くなりません。このような時、熱をさまして治す薬(白虎加人参湯;ビャッコカニンジントウなど)を使います。このとき使った漢方薬の分類は、3分類の考え方から分類すると下薬です。高熱という症状に対して早く効かせるために短期間で使います。
一方で、風邪の引きやすい人が、風邪を引きにくくするために、予防と健康維持目的で使うお薬は、人参や黄蓍(オウギ)の入った、上薬を使います。上薬は、食品よりも効果はあるけど、3分類の中で、最も食品に近い存在と考えてよい、と思います。
また、妊婦さんには、薬は原則使わないことになっていますが、安胎作用(流産防止、おなかの赤ちゃんの成長のため)の目的で積極的に採用することもあります。
したがって、漢方薬は、使う目的を誤ると意味をなさず、毒にもなるけれど、体質に合わせて正しく使うと、安全という結論に達します。病気の予防と健康維持の目的のために食品のように飲むことも出来る漢方薬もある、ということです。
代表生薬
上 品
人参(ニンジン)、黄蓍(オウギ)、地黄、(ジオウ)、枸杞(クコ)、山薬(サンヤク)
黄柏(オウバク)、松葉(マツバ)
中 品
黄芩(オウゴン)、葛根(カッコン)、紫根(シコン)、当帰(トウキ)、麻黄(マオウ)
下 品
桔梗(キキョウ)、桃仁(トウニン)、半夏(ハンゲ)